書名：楽園のデザイン イスラムの庭園文化 著者：ジョン・ブルックス 訳者：神谷武夫 発行元：鹿島出版会 発行年：1996年（第四刷） 定価：5500円（税別） ページ数：279ページ イスラム建築に関する本はそれほど珍しくありませんが、これはイスラム文化のなかの庭園を取り上げ、その歴史やデザインを解説した貴重な一冊です。 「訳者あとがき」から少し引用させていただきます。 古代ペルシャでは、壁や塀で『囲われた庭園」のことを、パイリダエーザ(Pairidaena)と呼んだ。――なぜ壁や塀で囲ったのか。中東地域はその大部分が砂漠的風土に属し、灼熱の陽ざしと砂ぼこり、延々と続く荒森地や砂漠、といったもので構成される「自然」そのものは、人間を優しく包み込むものではなく、むしろ敵対するものであった。それだから、人びとが快適な環境を得ようと思うなら、周囲の自然から隔離され、保護された「避難所」を作らねばならなかったのである。熱風や砂塵、陽ざしや獣をさえぎるべく壁や塀で囲いとられ、涼しい日陰と水をたっぷり備えた場所、それが中東の人びとにとっての庭園であり、英語のパラダイス(Paradise)の語源となったパイリダエーザなのであった。 この〈楽園〉の概念は七世紀に中東に起こったイスラム教に受けつがれ、ムハンマドは「コーラン』の中で、選ばれた者に約束された来世の楽園について繰り返し語っている。来世の(天上の)楽園のイメージのもとになったのはこのパイリダエーザであり、そしてこの楽園のイメージを現実のものとしようとしたヘパラダイス・ガーデン〉こそがイスラム庭園の理念であり理想であった。 この「楽園としての庭園」、すなわち「地上の楽園」を実現しようとした王侯や庶民、造園家や建築家たちの営為の歴史がイスラム庭園の歴史であり、現代のランドスケープ・デザイナーであるジョン・ブルックスが本書で描こうとし、そして見事に成し遂げたところの世界である。 ★最初のページに、松岡正剛氏のサイン（Seigou）と、氏の俳号である「玄月」が記されています。 ★カバー、書籍とも大変良い状態です。 #イスラム #松岡正剛 #イシス #建築 #パラダイス #グラスベリー一般